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疑惑のスウィング - ゴルフがメインにきて悪くない

疑惑のスウィング プロゴルファー リーの事件スコア 4 / アーロン & シャーロット・エルキンズ / 寺尾まち子訳 / 集英社文庫HM / 620円+税
表紙イラスト: カスヤナガト 装丁: 刈谷紀子(P-2hands)
Where have all the birdies gone? by Aaron & Charlotte Elkins (2004)

疑惑のスウィング―プロゴルファー リーの事件スコア〈4〉 (集英社文庫)

疑惑のスウィング―プロゴルファー リーの事件スコア〈4〉 (集英社文庫)

 

男女混合の米国チームと英国チームでスコアを競う「スチュワートカップ」にラッキーな抽選枠で出場できることになったリー。調子を落としているアメリカチームキャプテンのロジャー・フィンリーらと共に団体戦に挑むが、試合開始前、ロジャーの調子が落ちている原因を知っていると公言していたフィンリーのキャディのディランが殺害される。

 

ゴルファーを主人公にしながら周囲の環境や道具立てばかりを利用し、添え物的な扱いだったゴルフをここへ来て正面から描きます。ファーストショットの緊張感だったり、ウィニングショットまでの長いやり取り、初心者グレアムの気づきを挿入し読者に同じ視点を持たせたり。意外とこれが成功しており事件が単純な分、話に起伏や緊張が生まれたのでした。加えて割りと早い段階でルー・サピオの視点が入り、新機軸も期待されました(これは、その後パタリと途絶えぬか喜びでしたが)。

興味深かったのはロジャーが調子を落とした原因として 1作目と同じネタを持ち出し、これを 1作目の解説で東尾理子が指摘したとおりのことを持ち出してひっくり返したこと。やっぱりあれはまずかったのですね、プロにあるまじきこと。ところが、これが逆に真相にもつながっているという技を見せてくれます。おぉ、やるじゃん。

 

ところで過去3作はゴルファーとしての人生と、結婚の間の選択で結論の出ない悩みに苦しみ、グレアムが離れるのではという不安や焦りもあったはずですが、今作はあっさり、リーからプロポーズ。シリーズを終わらせるためでしょうかね。

次回はシリーズ最終作です。