atachibana's blog

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同・級・生

同・級・生 (小学館文庫)
同・級・生 / 柴門ふみ / 小学館文庫 / 710円(676円) 人に借りた
イラスト 柴門ふみ / AD 海野一雄 / デザイン 三輪純江 + Bay Bridge Studio


ビッグコミックスピリッツにおそらく1987年頃に連載された作品。鴨居とちなみは大学卒業間際に別れ、就職する。鴨居は同僚の杏子と付き合い始め、一方ちなみは仕事に邁進するが、それぞれがお互いのことを意識しながら時間が流れる。ちなみは見合い相手の飛鳥と付き合い始め、これまで以上に鴨居を意識する。一方で飛鳥は彼なりの優しさを示す。


大人になりきれない若者がテーマ。恋愛であれ、仕事であれ、自分に素直になれず、どこか他人の目を意識しつつ計算してしまう。しかもそれに嫌気を覚えながらも、ただ自問自答したり、泣くばかりで会話にはつながらない。読みながら「その気持ちも分かるけど、だったら ... 」とつぶやくことしきり。貸してくれた人が「読むにはタイミングがある」と言いましたが残念ながらそうなのかもしれません。


さてラスト。表面的にはちなみは飛鳥の元へ行きますがが、これはそのままに取っていいのかちょっと悩んでいます。と言うのも結果的に二人とも互いと寝るまで自分がいかに近くの人間を、どれくらい愛していたかが分からないようですし、その度合いも、「飛鳥さんを深く愛してしまっている新しい自分を認めるのが怖くて、ズルズルのばしにしてしまっていた」自分に一応の結論が出たかに見える空港の場面でさえ二人の視線は暗く、飛鳥のアドレスを握るちなみの表情は恋人に会うそれでなく、決闘の場面に向かう戦士の趣。お前本当に飛鳥が好きなのか? 「答えを見つけるのではなく、自分でつくるのです」。幸せにならなきゃって決意だけなんだろうか、と。その後の、それぞれの恋愛風景の明るさが擬似的なものに見えて仕方なく、最後はちなみと飛鳥でなく、ちなみと鴨居がマンハッタン(?)の同じ風景を見ているとなると、うーん。やっぱり最後は戻ってくることを暗示しているのではないか、と考えてしまうわけです。


Wikipediaによると大ヒットしたドラマ版のキャストは、緒形直人、安田成美、菊池桃子石田純一。それぞれに適役だが、逆に適役過ぎてあざとい。特に菊池桃子。見たいです(笑)