atachibana's blog

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ポットショットの銃弾

ポットショットの銃弾 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ポットショットの銃弾 / ロバート・B・パーカー / 菊池光訳 / ハヤカワ文庫HM / 882円 (840円)
カバーフォーマット 辰巳四郎 / カバーデザイン ハヤカワ・デザイン / カバー写真 (C)Alamy/PPS通信社
Potshot / Robert B. Parker


メアリ・ルー・バックマンは夫がギャングに殺されたと、捜査を依頼する。スペンサーはギャングの存在を確認するものの、彼女と夫のそれぞれの不倫、ギャングのボス、ザ・プリーチャーの姿勢などから、表面に見える部分だけが事実でないことを知る。ギャングとの抗争に備えホークやヴィニーら計7人を集める一方、殺人事件の真相が町ぐるみの詐欺行為と関連があることを知る。


タイトルや帯の「荒野の七人」から、物語は派手な銃撃戦へ収束するものとばかり思っていたら、ギャングは絶対悪として描かれず、また意外や早くに対抗メンバーを集めておいて、しかも撃たない。戦い方にはこだわり、事件の背景には組織犯罪が隠れている、と、実にスペンサーらしい展開でした。魅力的な女性を出しておいて実は裏がある、というのは前作「ハガーマガーを守れ」でも見られた展開ですが、人間的にはこちらの方がたちが悪そう。よくあるタイプと言ってしまえばそれまでですが。ただ困ったことにラスト、見逃されてしまうのまでが一緒というのは工夫がない、というか、大いに不満が残るというか。仲間まで撃たれて、それでいいのか? > スペンサー


パーカー的にはお気に入りのキャラクタを自在に動かし、しゃべらせ、さぞや楽しかったことでしょう。お遊びのような話しですが、実際はこちらも読んでいて楽しかったです。ただしもう少し個々に印象的なエピソードを書いてあげてもよかったんではないか、と。そうした意味ではメインキャラしか目立たない「荒野の七人」は言い得て妙か。十分な背景を持った魅力的なキャラなのは分かりますが。またギャングのボス、ザ・プリーチャーはせっかくの造形なのに、最後は黒幕タンネンバウムの部下でしかないかの扱いで、ちょっと残念。そもそも彼らと一戦交える意味があったのか? 真の犯人グループと対峙して欲しかったです。