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悠久の銀河帝国

悠久の銀河帝国
悠久の銀河帝国 / アーサー・C・クラーク & グレゴリー・ベンフォード / 山高昭訳 / ハヤカワ文庫 / 882円 (840円)
Cover Direction & Design : 岩郷重力
Cover Illustration : L.O.S.164+WONDER WORKZ。


クラークの50年以上も前の作品「銀河帝国の崩壊」(原題「Against the Fall of Night (夜のとばりに対して)」)に、ベンフォードが続編を付けた作品で、原題は「Beyond the Fall of Night(夜のとばりを越えて)」。ベンフォードって作品のタイトルだけはうまいです、いつも。


さて前半。センス・オブ・ワンダーに満ち満ちた壮大で、かつポジティブな未来がたおやかに語られます。結局は一人の好奇心溢れる少年の成長物語かもしれませんが、ダイアスパーという魅力的なシェルター都市、地下を走るトランスポーター等々のガジェットや、10億年後というムチャクチャな設定で、久しぶりにSFを読む醍醐味を味わいました。50年前の作品だけど。


一方、後半。こっちも前半に負けず劣らない壮大なホラで、それなりに楽しいのですが(特に巨大風車生物が地球の自転に合わせて回る構図や、太陽系再配置など)、アライグマ生物シーカーと旧人類クレイの冒険にさしたる魅力はなく、アルヴィンもセラニスもヴァナモンドもただいるだけ。もったいない。カール・セーガンやクラークの描いた気泡生物から遥かに進歩した生物図鑑を見せてくれる才能はあるだけに、あとはもう少し物語りに結びつくといいのですが残念。まぁ、これはすべてのベンフォード作品に当てはまるのですがね。


ところで一つだけ最後まで分からなかったのが冒頭「プロローグ」に出てくる宇宙船。アルヴィンの幼少時代なのでマスターとは時代が合わないと思うのですが、どうでしょう。「過渡期時代」は数千年前なのでしょうか??